姫路市飾磨の調剤薬局
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調剤の定義とは?

調剤をしている場面
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薬剤師は調剤するのが主な仕事です。

薬剤師の仕事≒調剤とまで言ってもいいくらいでしょう。

では、調剤とはどういう行為を意味するのでしょうか。

正確に答えられるでしょうか。

正直、私は分かりません。

調剤とは何なのか整理してみます。

調剤とは

成文法上の定義

薬剤師に関する法律と言えば薬剤師法です。薬剤師法に「調剤とは…」という条文はあるでしょうか。無いですね。調剤という言葉は山ほど出てきますが。

じゃあ、医薬品医療機器等法はどうでしょう。調剤を定義付ける条文は無いですね。医師法には、処方箋発行義務を規定した22条に調剤という言葉が1つだけあるだけで、その他、言葉すらありません。

保健師助産師看護師法には、特定の条件下で医薬品の授与と指示が認められています(第37条)。これはとても難しい問題なので保留にしておきます。何が難しいって、授与と指示が調剤に含まれるかどうかです。

微妙な保健師助産師看護師法第37条以外、「調剤」を定義づける法律はありません

判例

では、判例はどうでしょう?

判例はありました。

大正6年3月19日の大審院判決で「調剤トハ一定ノ処方ニ従ヒテ一種以上ノ薬品ヲ配合シ若クハ一種ノ薬品ヲ使用シ特定ノ分量ニ従ヒ特定ノ用途ニ適合スル如ク特定人ノ特定ノ疾病ニ対スル薬剤ヲ調製スルコトヲ謂ウモノトス」と判示されました。

処方に従って特定の人の特定の疾患に対して特定の用法用量にしたがって薬を調製すること。

気になるのが「調製」という言葉です。

「調製」とは国語辞典によると

ととのえ作ること。規則や注文の通りに作ること。

三省堂 大辞林

大らかに考えて処方箋に従って薬を集めたり作ったりすることと大雑把にとらえることができます。これが日本薬剤師会が述べている「狭義の定義」です。あくまで一業界団体が述べている定義です。

そしてもう一つ重要な点として、日本は制定法主義の国です。英米みたいに判例法主義の国ではありません。つまり、この大正時代の判例が直接の法源とはならないということです。しかも古いですしね。

結論

調剤を厳格に定義づけるものはありません。
 

法的な定義がない理由

おそらく立法不作為ではありません。理由は必ずあるでしょう。もっとも可能性が考えられるのは、あえて条文で定義しなかったということです。具体的行為を規定しないというのは一つの立法技術です。

日本病院薬剤師会顧問弁護士の三輪氏によると

http://pha.jp/shin-yakugaku/doc/Vol45No9_217-220.pdf

「概念の相対性は他の法律でも良く見られ,時代の要請に弾力的に即応していくことはそれが法解釈上不合理なものでない限り,好ましいというべき」

時代の要請に合わせて変化させるというものです。

これにはもう一つの面があります。

例えば、こういった行為が調剤ですよと規定したとします。すると我々薬局経営者は考えます。給料が高額で採用しにくい薬剤師よりも無資格の事務員に少しでも多く仕事を任せようと。

薬剤師が集めた薬をカウンターにいる別の薬剤師のところまで持っていく行為は調剤なのか?薬袋をビニール袋に入れるのは調剤なのか?経営者はどんどん考えます。

すると行政側は困ります。秩序が維持できなくなるのです。

つまり、調剤の定義を抽象的にすることで、薬局が合理化しようとする意志を挫き、突拍子もない薬局の発生を防ごうという目的だろうと考えられます。

いつの事か忘れましたが、当店が参加した講習会で、「調剤とは何なのかという問い合わせは多いけども、定義することはできるが貴方達の仕事がなくなるだけですよ」と説明を受けたことがありました。昔のことなので、薬務課か保健所か忘れましたが…

広がる薬剤師の調剤

昨今、薬剤師の業務が拡大される傾向があります。 それを理解しやすくするのが業界団体の解釈です。具体的には日本薬剤師会と日本医師会です。これらの団体は互いの権益のため、相反する解釈をしています。これらを並べると理解がしやすいと思われます。

※業界団体が権益を主張することは当たり前のことですので、批判では無いです。

日本医師会による薬剤師の調剤の解釈

日医総研がPDFを作っています。

http://www.jmari.med.or.jp/download/WP358.pdf

重要な部分は下記の通り。

薬剤師法により薬剤師に許される行為は「医師の処方に忠実に従 って調剤すること」のみであり、「患者の病名若しくは容態を聞き、もってその 病状を判断して調剤・供与」することは、全体を包括して、医師法 17 条の医業 である

「「忠実に従って」調剤することのみ」なので、服薬指導も疑義照会も違法であるとの解釈です。医師の裁量を信頼して、処方箋を忠実に、疑問があったとしても薬を渡して、質問があっても口をつぐむのが調剤である。

もちろん世間はこの解釈の通りになっていません。普通の薬剤師は服薬指導も疑義照会もしており、逆にこれらの業務をしないと薬剤師法24条違反になります。

日本薬剤師会による薬剤師の調剤の解釈

薬剤師の業務拡大には時代の要請があります。昔は「先生のおっしゃった通りに飲めば良いんですよ」で済んでいたかもしれませんが、現代において、それは通りません。

また、日本薬剤師会は薬剤師の権益の拡大のために定義の拡大を考えます。それが「広義の定義」です。色々言っていますが、正直確たる定義はありません。弾力的な即応です。

個人的見解

あれこれ手を広げる前に、既存の仕事の価値をもっと認めて貰うようにするべきと思います。

例えば粉砕。製剤的に粉砕の可否を判断するのは簡単ではありません。メーカーも保証してくれません。医師が製剤学勉強してますか?製剤学は薬剤師こその専門分野です。私も薬剤師のいないクリニックで子供を診察してもらったらクラリスロマイシンの粉砕をもらいまして…。激苦でエライコッチャでしたよ。専門家なら渡された時点で気づけよと言われればそうなんですが…。

厚生労働省、というより財務省が圧力かけすぎるから薬剤師会も必死になってアピールしすぎて足元がおろそかになっている印象です。

厚生労働省の怪しげな動き

面白い通達がありました。

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kenko/hokeneisei/iryou/yakukituchi_h27.files/20150625-1.pdf

今般、薬局において、薬剤師以外の者が軟膏剤の混合を行っていた事案が明らかとなりましたが、当該事案を含め、少なくともこうした軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を薬剤師以外の者が直接計量、混合する行為は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても同条への違反に該当する

「少なくともこうした軟膏剤、水剤、散剤等」…

錠剤を集める行為が調剤に当たるか?という判断については留保しました。これは大正時代の判例と異なった動きです。 もちろん、日本は制定法主義なので問題はありません。

一方で、兵庫県庁薬務課や姫路市保健所は錠剤を集めることは調剤に当たるとの解釈です。

足並みは違えど微妙な変化が行政にもあるように感じます。

その他の医療関係者の調剤も含めるととんでもなく複雑になるので、別の記事でまた機会がありましたら書いてみます。

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