姫路市飾磨の調剤薬局
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なぜ薬を飲みすぎてはいけないか

 

今回は細胞レベルのミクロな視点から薬の効果について書いていこうかと思います。薬をたくさん飲んだら効果はどうなるのか?という疑問はみんなあるものだと思います。医療関係者は個々の薬や個々の事例に対して副作用報告や成書、使用経験からの知見など、臨床的知識から判断していきます。しかし、薬理学的な基礎理論に基づいた理解も応用が利いたり記憶の省エネができて面白いと思うので考察していこうと思います。

 

薬が効くときに細胞レベルで起こっていること

受容体の概念

 

薬は服用して、小腸で吸収され、血管を通って全身にまわって、作用部位まで到達する。では作用する部位の細胞に対して薬はどのような働きをしているのでしょうか。現在考えられている概念の基礎を作ったのはLangleyという人やEhrlichという人などです。その概念を定量的に解析したのがClarkという人です。

教科書から引用すると

Clarkは、アセチルコリンが、摘出したカエル心筋細胞表面全体の1,000しか覆わない濃度で心筋収縮を抑制することを示した。すなわち、このアセチルコリンの心筋抑制作用は、心筋細胞表面のごくわずかな特別な部位に結合することで発現することを定量的に示した訳である。さらにClarkはその特別な部位を受容体と定義し、薬と受容体との結合は、一般的に可逆的で質量作用の法則に従うと考えた。

田中千賀子/加藤隆一/成宮周、NEW薬理学改定第7版、南江堂、2017年、P.4

心臓に作用する薬でも、心臓そのものに作用している訳ではなくて、心臓の細胞の特定のタンパク質に結合することで心臓全体に影響が及んでいくということです。そういった薬に対して結合するタンパク質を受容体と言います。そしてこれらの化学結合のほとんどが水素結合やvan der Waals結合などの可逆的結合によるものです。

多少の例外もあります。有名どころではバファリンで有名なバイアスピリン。これは、シクロオキシゲナーゼという細胞外に存在するタンパク質に共有結合します。

薬が受容体に結合すると

薬が受容体に結合すると、受容体のポテンシャルエネルギーが変わります。もともとの分子間力で受容体タンパク質の立体構造が保たれていたところに、違ったエネルギーがやってくるくことになる訳で、受容体の立体構造が変化します。上の図の「Y」がねじれるような感じです。これが薬の作用がはじまりです。(または体内の物質よりも先に受容体にくっついて、作用を阻害する目的の薬もたくさんあります。)

となると、はっきり分かってくることがあります。

「服用量増加は体内の作用部位の濃度上昇につながる。作用部位の濃度は受容体の占有率につながって、これが作用の強度につながる。」

ということです。これは、服用量を増やせば効果や副作用のリスクが増加することを意味する一方、濃度が2倍になったからと言って占有率が2倍になるとは限らないということも言えます。

つまり、いくらたくさん薬を飲んでも一定以上の効果は期待しずらいということです。これは一般論として言えることでしょう。

受容体の形が変わった、だから?

アセチルコリンが受容体に結合するだけでは筋肉には影響はありません。受容体の変形は効果を直接生まないかもしれませんが、他の物質に何らかの影響が及びます。そして、その物質がさらに何かの影響を及ぼします。このように、ドミノ倒しのように変化が変化を呼び最終的にその作用が生まれます。このドミノ倒しをシグナル伝達系と言います。

大変抽象的なので例を挙げます。上記のアセチルコリンの例では、アセチルコリンが受容体に結合するとアデニル酸シクラーゼという酵素が抑制されます。このアデニル酸シクラーゼはAMPという物質をcAMPに変えてエネルギーを生み出す酵素です。これを抑制することで心臓の収縮作用を抑制します。こういったことから、薬の効果はその成分の濃度だけに依存している訳ではないと推測出来ます。

ところが教科書では

通常、薬の細胞・組織に対する効果(反応)E薬物-受容体複合体の量[DR]に比例する

田中千賀子/加藤隆一/成宮周、NEW薬理学改定第7版、南江堂、2017年、P.6

と書いています。上記の推測とは矛盾した記述です。私はこれについて正確に述べれるほどの知識持ち合わせていませんのでこの辺りが限界です。しかし…まあ、どちらであっても結論に矛盾はしないでしょう(すみません)。

同じ受容体でも部位が違えば作用する量も違う

同じ受容体は体の一つの部位だけにあるわけではないです。例えば抗炎症薬のNSAID(イブプロフェンやロキソプロフェンなど)は、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素(細胞外受容体)に結合することからその作用が生まれます。この薬は炎症部位のシクロオキシゲナーゼへの結合することでその作用が始まりますが、シクロオキシゲナーゼは胃や腎臓、心臓など様々な部位にあります。

それぞれの部位での副作用が全く同じ濃度で同程度で起こるということはあり得ません。その程度のことを薬物感受性と言ったりします。

一つの部位での作用に満足できず、服用量(体内濃度)を増加させると、他の部位での作用が起こる恐れがあるということです。

 

具体例を挙げると

たとえば、市販のロキソニンやイブといった鎮痛薬はいくら飲んでも麻薬性鎮痛薬の効果には及びません。受容体の占拠率がどこかで頭打ちになり、効果の限界点があるためです。限界点に不満を持ちたくさん薬を飲んでいると、本来の受容体への効果に増加がみられないどころか、作用して欲しくない他の受容体でも薬の成分が作用することになり副作用を発生させます。

もちろんすべての副作用が発生する仕組みを受容体の占拠率と部位の薬物感受性で説明することは出来ません。他の仕組みもあります。

ロキソニンやイブは意外と水に溶けにくく体内に吸収されにくい物質です。このため、服用量を増やしたとしても体内を循環する血中濃度は服用量に比例するほどは伸びません。そのことに加えて上記の受容体の占有率です。しかし、吸収前の胃液中では別です。ここで濃度が上がると胃粘膜への刺激が増加して消化管障害の副作用が起こりやすくなります。

 まとめ

・薬の効果は服用量に関係している

・しかし、比例して効果が出るわけではないし限界がある

・認められた服用量を超えると副作用が出るリスクがある

※これは基礎的な薬理学の概念の話ですべての薬が上記に当てはまるわけではありません。例外は多く、実際の個別の問題はやはり臨床的知見によって判断されるべきです。

※写真はイメージです

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