姫路市飾磨の調剤薬局
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添付文書の副作用をそのまま信じていいか知りたいので、因果関係についてまとめてみた

こちらの記事で副作用を考えるには因果関係について知らなければないと書きました。

副作用は一般用語と専門用語の意味が違うので、整理してみた

今度は因果関係、つまり実際に起こった副作用の情報を観念上の副作用として認めていく過程について考えていきたいと思います。

科学的根拠があれば事実じゃないのか?いいえ。事実なんて存在しないんですよ…

だって、薬理学の教科書一つとっても、本によって書かれている副作用が微妙に違うわけですから。

因果関係とは

素朴な定義から始めていきます。
国語辞典では

いくつかの事柄の関係において,一方が原因で他方が結果であるというつながりのあること。

三省堂 大辞林

「〇〇が起こった。××だらかだ。」という関係です。

因果関係とは原因の追究であり、その目的は将来の予測でしょう。

過去の出来事から観念として認識し、観念から未来の出来事の予測するハブのような役割があるでしょう。

因果関係の性質

まずはハブの特徴を理解することが大事です。

因果関係の原始的な性質についてはJudea Pearl氏の著書がしっくりくると思います。

聖書を引き合いに

実際、神様が「あの木の実をとって食べたのか」と尋ねたのに対して、Adamは「あなたが一緒にしてくれた女性が木から果物をとって私にくれました。だから私は食べたのです」と答えています。

EveはAdamと同じくらい賢く、「蛇が私をだましたので、私は食べたのです」と答えているのです。

この物語では、神様は説明を求めているわけではなく、事実だけを尋ねているということに注意しなければなりません。説明をしなければならないと考えたのはAdam自身なのです。このことから、因果的な説明は人間がつくった概念であることがわかります。

引用)統計的因果推論―モデル・推論・推測― 

 

因果関係は客観的に証明されるものではなく心の習慣であるというものです。

もう一つは多くの場合、因果関係の話題があがったとき責任の所在が内在していることです。

「現実の因果関係」なんてものはそもそも存在しません。

だから天気予報や地震予報に誰も保証を求めないのです。

しかし、医療ではそうはいきません。

その行為は必ず評価され、一定の保証を求められ、上手くいかないと裁判に至ります。

ということでさらに展開していきましょう。

ヒュームによる因果関係の定義

今日の因果関係に関する研究者の多くがデビット・ヒュームの哲学を基礎としています。

さて、ヒュームは因果関係は経験に基づく心の習慣ということを前提に因果関係の指標を提示しています。

1.原因と結果が空間的・時間的に近接していること

2.原因が結果よりも時間的に先行しており、継続して結果が起こること

3.同じ原因から必ず同じ結果が生じること

引用)調査観察データの統計科学

1.空間と時間という言葉はそのまま物理学的な意味と考えて良い。原因が起こ場所と結果が起こる場所が遠すぎたり、大きな時間差があったら因果関係なんてないよということ。

2.はそのままの意味。

3.の注意点は「必ず」というところ。前はあったけど今回はなかったというのは因果関係ではない。

これは科学ではなく哲学としての基準ということに留意する必要があります。

つまり、科学的検証ではなく、哲学の方法である経験に対する直観と反省によって考察する必要があります。また、自分の中で、あるいは特定の社会集団の中で因果関係があると主張するものであって、外部に主張し得ないという特徴を帯びてきます。

例えば、「ある薬に〇〇という副作用がある」という情報の根拠があったとします。

その根拠が科学的であるということははっきりと言い切ることは出来ないのです。

そのかわり、どういった特徴が根拠があるのかをその仲間内で決めて、仲間内で確認し合うということが出来るわけです。

1~3までについて「あるよね」と仲間内では認め合うということです。

その仲間内での基準とは

さて、その因果関係が自分の中だけで完結するのであれば他人に対して使えるものではありません。一般社会にしろ、薬剤師社会にしろ、社会一般で認められるものでなければなりません。

一般社会では

その資料がどれくらい公的にオーソライズされているかです。そういった意味では様々な資料の中で確実なものが添付文書です。

そこまでいかないにしろ、インタビューフォームなど、ある程度権威付けがされているものもあります。

薬剤師社会の考え方

資料の分類

医薬品情報はその加工度によって一次資料(情報)、二次資料、三次資料に分けられています。他の分野でもそうでしょうけど。その加工の程度によって分類されているというのが一般的な薬剤情報学の教科書に書かれている説明です。

一次資料とは無加工の情報のことです。研究論文などを指します。

二次資料は研究論文をまとめたもの。MEDLINEとかの検索するところなどを指します。

三次資料は、書籍や添付文書、インタビューフォームなどのことです。

〜ここから下は私見〜

一次資料は事実関係の情報であり、三次資料ではその事実関係が薄れ、観念的になり、普遍的な認識になっていくと私は思っています。つまり、因果性が高まっていくということです。もちろん、書かれている内容を一律に因果性が高いと考えるのは良くないでしょう。その当たりは柔軟に読み取っていく必要があります。

まず三次資料から

〜私見です〜

ここから分かることは、まずは三次資料にあたって、情報が無かったり、補強したい場合に二次、一次と遡るということが大事であると思います。

その中でも教科書や指針、公定書などは特に因果性が高いと言えるでしょう。そして、流通量が多い書籍ほど薬剤師社会の中で認められていると考えてもそれほど問題にはならないと思われます。

そうです。有名な本にあたることが最も社会的に妥当なことです。

当店に置いているのはこちら

一次資料へのアプローチ

カテゴリー上、因果性が低くとも決して因果関係が薄いわけではありません。選択バイアスなどが少なければランダム化比較試験なら充分に因果性があります。

その資料の根拠の質を評価するのにエビデンスレベルというものがあります。詳しくはこんな感じ。

 

Level 内容
1a ランダム化比較試験のメタアナリシス
1b 少なくとも一つのランダム化比較試験
2a ランダム割付を伴わない同時コントロールを伴うコホート研究(前向き研究, prospective study,concurrent cohort studyなど)
2b ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究(historical cohort study,retrospective cohort studyなど)
3 ケース・コントロール研究(後ろ向き研究)
4 処置前後の比較などの前後比較,対照群を伴わない研究
5 症例報告,ケースシリーズ
6 専門家個人の意見(専門家委員会報告を含む)

引用)日本肝臓学会「エビデンスレベル分類・推奨グレード分類」

横道に逸れますが、サプリメントでよくある「〇〇教授推奨!」って大したレベルじゃないですね。

一次資料のデメリットは都合の良い資料を恣意的に使うことが出来るという点です。

資料なんて何にもねえよ

〜完全な私見〜

たまに資料が無いという事態に陥る場合があります。そんな時はヒルのガイドラインはどうでしょう。イギリスの統計学者ヒルによって提唱された基準です。

1 強固性 (Strength)
要因と疾病が強く関連すること。事例。煙突掃除夫の睾丸腫瘍による死亡率は他の職業従事者より200倍高い。喫煙者の肺がん死亡率は非喫煙者の9-10倍高い。
2 一致性 (Consistency)
異なる研究者によって、異なる地域・条件・時間に、関連性がくりかえし観察されること。事例。米国公衆衛生局長官の諮問委員会は、喫煙と肺がんに関する29の後ろ向き研究と7つの前向き研究を吟味し、これらの多様な研究で一致した結果が認められたことから、喫煙と肺がんの因果関係を肯定する判断を行った。
3 特異性 (Specificity)
特定の要因のみから疾患が発症したり、特定の疾患のみが要因から発症するような、要因と疾病の間に特異的な対応が存在すること。
4 時間的前後関係 (Temporality)
原因と考えられる要因が疾病の発症に時間的に先行すること。
5 生物学的勾配 (Biological gradient)または量反応曲線 (dose-response curve)
要因の程度が強くなるほど疾病の頻度も高くなること。事例。同じ喫煙者でも、一日あたりの喫煙本数が多くなるほど肺がん死亡率が高くなる。
6 妥当性 (Plausibility)
観察された関連性を支持する生物学的知見が存在すること。
7 一貫性 (Coherence)
観察された関連性が、疾病の自然史や生物学に関する既知の事実と一致すること。事例。喫煙と肺がんに関する諮問委員会では、両者の関連性は、喫煙率と肺がん死亡率が共に上昇しており、肺がん死亡率が女性より男性で高いという既知の事実と一致するので、一貫性ありと判断された。
8 実験的研究 (Experiment)
観察された関連性を支持する実験的研究が存在する。事例。喫煙者が禁煙するための予防活動によって、肺がん死亡率が低下する。
9 類似性 (Analogy)
類似した関連性が存在すること。事例。サリドマイドとrubellaの因果関係から、他の薬剤と妊娠中のウィルス疾患の関連性を類推する。

引用)厚生労働省「総論表2 Hillによる因果性の判定基準

 

添付文書に書かれている副作用を見て、このガイドラインに照らし合わせて判断するわけです。

割と薬剤師、みんな暗にやっていると思いますよ。

添付文書の副作用を見て、「こんな副作用、作用機序的にありえねえよ」とか思ったことないでしょうか。

このガイドラインはこういった思考の流れを綺麗に整えるのに役に立ちます。

 

まとめから課題

「添付文書にはそれなりの頻度で起こったと書いていました。これをちゃんと評価したのですが、やはり起こりうる可能性があります。対処方法は〇〇です。気をつけてください。」

こうして、副作用報告などの情報から観念上の副作用を導くことが出来ました。

これで取り敢えずなんとかなりました。綺麗に終われました。

 

ところで、この内容でですよ。

「だから俺が副作用になる可能性は何%なんだよ。」

こういった疑問には答えられているでしょうか?

この辺りが私の勉強中のところです。

 

※この記事で私見を多数書きましたが、当店は法や行政指導、慣習を順守して業務を行っています。

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