姫路市飾磨の調剤薬局
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解熱鎮痛薬の胃への副作用を高校化学の知識で考察してみた

一部の薬は胃に対して副作用があります。有名な薬はNSAIDでしょう。NSAIDとはロキソニンやボルタレン、イブなどで有名な普通の解熱鎮痛薬のことです。これらの薬は食後に飲むようにお伝えされるでしょう。なぜ、食後に飲むとその副作用が減るのでしょうか。これを一つのモデルに当てはめて、定量的に考えていきたいと思います。

NSAIDの特徴

薬理学的な性質として、胃粘膜に作用して障害を引き起こす副作用があります。

化学的な性質は弱酸性で水に溶けにくく、油に溶けやすい性質があります。

胃粘膜周辺のモデル

NSAIDは小腸で吸収されます。しかし、胃では全く吸収されないということではありません。胃でもほんのちょっと吸収されて、吸収量がほんのちょっとであるがゆえにその部位(胃粘膜)だけで悪い影響が生まれることを意味しています。

その吸収のモデルを目いっぱい簡単にするとこんなかんじ。

胃の中から血液中に移行して悪さをする。

間の脂質粘膜のバリアをただの脂質のバリアだとする。

血液の流速は考慮せず、滞っていると仮定する。

参考)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 13th Edition (Goodman and Gilman”S the Pharmacological Basis of Therapeutics)

NSAIDが溶けると

市販のNSAIDはカルボン酸ナトリウム塩(-RCOONa)の場合が多く、水に溶けると

$$RCOO^-+H2O⇄RCOOH+OH^-$$

という反応を示します。

ただ、複雑になりそうなので、今回はイブプロフェンなどのナトリウム塩じゃないモデルで考えてみます。こんな感じです。

$$HA⇄H^++A^-$$

高校で勉強する電離平衡です。

$$Ka=\frac{\left[A^-\right]\left[H^+\right]}{\left[HA\right]}$$

これを以降に使うために式変形

$$\left[HA\right]=\frac{\left[A^-\right]\left[H^+\right]}{Ka}$$

3つの平衡

さてこの電離平衡ですが、2か所で起こっていますね。

あと脂質のバリアを挟んだ平衡があります。

こんな感じです。

 

それぞれ考えていきましょう。

 

1.胃内部での電離平衡

$$\left[HA_胃\right]=\frac{\left[A_胃^-\right]\left[H_胃^+\right]}{Ka} ―➀$$

2.血液中の電離平衡

$$\left[HA_血\right]=\frac{\left[A_血^-\right]\left[H_血^+\right]}{Ka}$$

血管内のpHは7.4なので

$$\left[H_血^+\right]=10^{-7.4} (pH=-\log\left[H^+\right]なので)$$

代入して

$$\left[HA_血\right]=\frac{10^{-7.4}}{Ka}\left[A_血^-\right] ―②$$

3.胃の粘膜を介した平衡

胃の粘膜をただの脂質の膜だとすると

$$\left[HA_血\right]=\left[HA_胃\right]$$

➀、②を使って

$$\left[A_胃^-\right]\left[H_胃^+\right]=10^{-7.4} \left[A_血^-\right]$$

$$\left[A_血^-\right]=\frac{\left[H_胃^+\right]}{10^{-7.4}}\left[A_胃^-\right]  ―③$$

血液中の濃度を求める

血液中のAの濃度の総量を求めてみましょう。

血液中のAの濃度は

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]$$

なので、②を使って

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\left(1+\frac{10^{-7.4}}{Ka}\right)\left[A_血^-\right]$$

③を代入して

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\left(1+\frac{10^{-7.4}}{Ka}\right)\frac{\left[H_胃^+\right]}{10^{-7.4} } \left[A_胃^-\right]$$

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\left(\frac{1}{10^{-7.4} } +\frac{1}{Ka} \right) \left[A_胃^-\right]\left[H_胃^+\right] ―④$$

 

ここで服用した量は胃であれ、血液であれどこかしらにあるので

$$服用量をA、消化液の体積をV_胃、胃粘膜周辺の血液の体積をV_血とすると$$

$$A=V_胃\left[A_胃^-\right]+V_胃\left[HA_胃\right]+V_血\left[A_血^-\right]+V_血\left[HA_血\right]$$

$$A=V_胃\left(1+\frac{\left[H_胃^+\right]}{Ka}\right)\left[A_胃^-\right]+V_血\left(\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]\right)$$

$$\left[A_胃^-\right]=\frac{A-V_血\left(\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]\right)}{V_胃\left(1+\frac{\left[H_胃^+\right]}{Ka}\right)}$$

これを④に代入して

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\left(\frac{1}{10^{-7.4} } +\frac{1}{Ka} \right) \frac{A-V_血\left(\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]\right)}{V_胃\left(1+\frac{\left[H_胃^+\right]}{Ka}\right)}\left[H_胃^+\right]$$

もう丁寧に式変形してられないので

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\frac{A\left(\frac{1}{10^{-7.4} } +\frac{1}{Ka} \right) \left[H_胃^+\right]}{V_胃\left(1+\frac{\left[H_胃^+\right]}{Ka}\right)+AV_血}$$

いい加減疲れたので端折って

$$\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]=\frac{A\left(10^{7.4}+10^{pKa} \right) }{\left(V_胃+AV_血\right)10^{pH}+10^{pKa}V_胃}$$

グラフにしてみる

ついでにGeogebraでグラフ化してみました。

・スライダーで定数を変えることが出来ます。

・違う数値を入れることもできます。

変数や定数は

$$y=\left[A_血^-\right]+\left[HA_血\right]、x=pHとしています。$$

Viが胃液の体積(V胃)、Vtiが血液の体積(V血)です。

点BがpH=1.5で、点CがpH=4.5です。

初期値

イブプロフェンの数値を入れています。

投与量A=200mg、pKa=5.2です。

食後の胃液分泌は500mLくらいでしょうか。

血液の体積はどう表現しましょうか?

正直分からないです(作っといて恐縮ですが…)。

適当に200mLに設定しています(本当に適当です)。

 

見えにくい場合はこちら↓

 

初期値としてはB(1.5,62.78)、C(4.5,3.72)なので、空腹時は食後の16.88倍です。

色々スライダーを動かしてみるとかなり値が変わりますね。

考察

血液内での濃度にかなりの違いが出ました。

そりゃ、副作用も出ますね。

また、空腹時に胃液の体積を増やすと一気に血液内の濃度が下がります。

食後に血液の体積が増加すると一気に血液内の濃度が下がります。

結論

というわけで、痛み止めを飲むときは食後か軽く食べた後に飲むようにしましょう。

食べ物を食べていない状況で解熱鎮痛薬を飲みたい場合はせめて多めの水で飲むようにしましょう。

食後に血液の体積が増加すると一気に血液中のNSAIDの濃度が下がったことから、食後に胃粘膜保護薬と一緒に飲むとより相性が良いということが言えるかもしれません。

けっこう仮定の多いモデルでしたが楽しんでいただければ幸いです。

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